(In,Fe)Sb強磁性半導体の高いキュリー温度と高い異常ネルンスト効果の実証に関する研究成果はApplied Physics Letters誌の注目論文 (Featured Article)として掲載された。
バンドギャップの小さい半導体は熱電効果であるゼーベック効果が強いため、熱を直接電気に変換できる発電素子の材料として活用されている。一方、磁性材料には、磁化と温度勾配と直角な方向に発電できる異常ネルンスト効果が有り、構造が簡単な発電素子や熱流センサーの材料として利用が期待ができる。強磁性半導体は高い異常ネルンスト効果が期待できるが、室温異常ネルンスト効果はキュリー温度が高い磁性金属にしか観測されず、GaMnAsなどのMn系強磁性半導体はキュリー温度が室温より低いため、室温異常ネルンスト効果が今迄観測されなかった。
本研究では、室温よりも高いキュリー温度を示すn型強磁性半導体(In,Fe)Sbにおいて、結晶成長を工夫することによって、460 Kという世界最高のキュリー温度を実現したとともに、-1.3~-3.2 μV/Kという高い異常ネルンスト係数を実現した。これらの値はよく研究された金属磁性体よりも高く、CoMn2Gaのトポロジカル磁性体に近い(図1)。本研究は強磁性半導体が異常ネルンスト効果を利用する半導体熱電素子の材料として有望であることを示した。
図1.異常ネルンスト効果の係数と磁化の相関。